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山本健吉の現代俳句(その9)


    したゝかに水を打ちたる夕桜   久保田万太郎

 「『日暮里渡辺町に住みて』と前書きがある。『したゝかに』が万太郎調である。この言葉でこの句が生きている。もちろん地面に水を打ったのであって、桜の樹にではない。夕桜が影を落としている家の前の道路にたっぷりと打ち水をして、桜の花がいっそう清楚な感じを際立たせたのである」

 久保田万太郎俳句には前書きのついたものが多いのが特徴である。この前書きによって万太郎調が鮮やかに読者の前に広がっていくのだと思う。著者の山本健吉も日暮里渡辺町界隈を認識していたはずである。もしかしたら万太郎の自宅も知っていたかもしれない、そのうえでの、この深読みであろうか。

   

   さす傘も卯の花腐しもちおもり   久保田万太郎


 「この句は、『さす傘も持ち重り』という平凡きわまる言葉に、『卯の花腐し』という長い名詞を裁ち入れて、巧みに句に曲折を生ぜしめた。この言葉の語感からして長雨の感じがあり、長雨に伴うアンニュイは日本文学の伝統的な詩情である。そしてこの作者の俳句は湿度が高いのである」

 万太郎俳句が「湿度が高い」とは流石の名論であり、大きく頷きました。


 そして、万太郎俳句が本領発揮していくのは、戦後の世の中が徐々に安定してくなかでの生活詠であり私の好きな俳句が多くあります。


   日向ぼつこ日向がいやになりにけり   久保田万太郎

   セル着れば風なまめけりおのずから   


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by haikutarou | 2017-10-06 08:09 | 名句鑑賞 | Comments(0)