山本健吉の現代俳句(その14)

   葛飾や桃の籬も水田べり  水原秋桜子

 葛飾と秋桜子は切っても切れない因縁がある。処女句集『葛飾』の中からだけでも美しい風景句をいくつも探し出すことができる。葛飾は一ころの作者にとって格好の吟行地であった。だが彼は言っている、「私のつくる葛飾の句で現在の景に即したものは半数に足らぬと言ってもよい。私は昔の葛飾の景を記憶の中からとり出し、それに美を感じて句を作ることが多いのである」。
 句集『葛飾』のあの瑞々しさ、情趣の豊かさ、絢爛さは、彼が幼年期から長い期間にわたって育て上げた美しいイメージが、時を得て咲き出たことによるものだと思われる。


   啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々  秋桜子

 秋桜子の代表句のひとつで感性豊かに詠まれて、俳句の近代化に一つの方向をもたらしたことは特筆おかねばならいと著者の山本健吉も書いていています。よく比較される高野素十の客観俳句と秋桜子の主観俳句ですが、私は主観俳句から客観俳句に転向しつつありますが揭句のような名句を読むと正直いって迷いも生じます。

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by haikutarou | 2017-12-02 12:37 | 名句鑑賞 | Comments(0)