<   2017年 10月 ( 22 )   > この月の画像一覧


天高し滅多に上を向かぬ犀     岩見陸二 


国境や森をそびらに秋の蝶      ハルツォーク洋子 


初鴨の水尾に巻かるる竹生島     田村英一


からつぽの像舎きりん舎ちちろ鳴く   伊佐利子


腰すゑて癌との戦大根蒔く       松井矢菅


露の世の忘れ去られし兵の墓      松木みゆき


古希四人集へば青春鰯雲        瀬々英雄


菜虫とる野を舞ふ未来知りつつも   一寸木詩郷   


by haikutarou | 2017-10-30 09:45 | 朝日俳壇

金時山登頂(10月27日)


遠足の子らうめつくす秋の山

a0376672_16141306.jpg







冠雪の富士を背にして鳥兜

山頂の米寿の人や野菊咲く

a0376672_16163157.jpg







竜胆や山ガールらの歓声に

by haikutarou | 2017-10-28 16:27 | 「西瓜の種」(自作句集)

吟行句会(10月26日)


縄文の丘に登れば秋の蝶

バンダナを袋に結び茸狩

乾きゆく砂利踏む音や秋の空

歪とはやがてはじける椿の実

赤き実に藪かき分けり烏瓜

数珠玉や猫は日向で昼寝中

鐘楼の音に身構へ枯蟷螂

蔓引くや赤い実ざくと爽波の忌

by haikutarou | 2017-10-26 22:57 | 「西瓜の種」(自作句集)

山茶花(10月24日)


秋寂ぶの指先乾くを知りにけり


残菊の雨をはじかず崩れけり


木の実降るポケット大き子供かな


松笠に乗り上げ青き轡虫


山茶花や靴の片減り父に似て


by haikutarou | 2017-10-24 20:15 | 「西瓜の種」(自作句集)


風の色束ね千種の色となる   藤井啓子


防人の山に露けき一碑あり   田中南獄


柘榴の実庭の主は露人かも   谷口一好


鳥を待つ有明海の秋干潟    木下万沙羅


闇といふ色凄まじき虫の声   花川和久


日の陰り色に出でけり鳥兜   内野 修


もう母は地蔵に近し赤蜻蛉   馬目 空


by haikutarou | 2017-10-23 11:42 | 朝日俳壇


   我が肩に蜘蛛の糸張る秋の暮れ   富田木歩


 「大正三年奉公時代のくとして『背負はれて名月拝す垣の外』があり、大正六年には、その生活の孤独な寂寥の影を帯びた句によって、特異な地位を占めている。時に二十一歳であるから、あたかも二十七歳の短命を予知したもののごとく、はなはだ早熟である」

 「揭句も大正六年作、『病臥』と前書きがある。母とともに弟を看病中、彼も病に倒れ、原因不明の異様な熱に苦しめられ、陰気な四畳半に枕を並べて寝た。彼の肺結核の最初の病症であったと思われる。蜘蛛のふるまいに何か不気味なものの影を見ていたようである」


   かけそくも咽喉鳴る妹よ鳳仙花   富田木歩


 「大正七年、弟の利助を亡くした彼は、この年また妹まき子に死なれた。この句は、死に近い妹の咽喉の微かな喘ぎを看病しながら聴き取っていたのである。その仄かなはかない感じが、鳳仙花に通い合うのだ」

 私はこの句に初めて出合ったとき、富田木歩のこれ程の生活苦を知らなかったが、何か胸を強く締め上げられるような感覚を抱いたことを鮮明に覚えている。


by haikutarou | 2017-10-22 16:18 | 句集鑑賞

鳥兜(10月21日)


鳥兜妻の香水「毒」といふ

蔓引けば実のぞろぞろと爽波の忌

木の実降るポケット太き子供かな

松笠に乗り上げ青き轡虫

by haikutarou | 2017-10-21 16:05 | 「西瓜の種」(自作句集)


   青梅の臀うつくしくそろいひけり   室生犀星
 
 「犀星は詩人であり、小説家であり、随筆家であって、俳句はそれこそ余技としてたしなんでいるにすぎない。だが彼の俳句は専門俳人にない独特の面白さをもっている。
それは彼の詩や散文をも貫いている特異な感覚が、その素人くさい一見稚拙な表現の中に滲み透っているとことだ。
北陸の物寂びた城下町に育ち、東洋的な枯淡の境地に惹かれる傾向は生得の気質であろう」
「この句は彼の生物画である。『臀うつくしくそろひけり』と言って、青梅の艶々しいなめらかな感触を巧みに描き出している」

   鯛の骨たたみにひろふ夜寒かな   室生犀星
   うすぐもり都のすみれ咲きにけり

 いずれも見逃してしまいそうな小さな景に想像力たくましく写生俳句だと思う。
文筆家としてお互いに影響しあったであろう、芥川龍之介の俳句との質感の違いは著者山本健吉の解説どうりだと思う。

by haikutarou | 2017-10-19 11:27 | 名句鑑賞

紫式部(10月18日)


落栗の虫喰ひばかり国ざかひ

此処よりは駿河の国や式部の実

天窓に守宮はり付く夜寒かな

草花の実のしたたかに秋深む

a0376672_22262350.jpg


by haikutarou | 2017-10-18 22:35 | 「西瓜の種」(自作句集)


   船下りてすぐの大樹や秋の風   草深昌子


 「船下りてすぐの大樹」のフレーズが外国の港町か、離島の港といった景が何かドラマの一節のような旅愁が色々な余韻が広げます。季語の「秋の風」がよく効いて大木の下でほっと一息入れて船旅のときめきとその疲れを癒している様子がうかがえます。 桟橋に降り立った時、これから始まる未知の出会いは春には春の、夏には夏のときめきがありますが、やはり作者には哀愁めいた秋が一番似合いそうな気がして好きな俳句です。

 以前職場の同僚で酔っ払うと出て来る故里、和歌山の話しに閉口しながらも一度訪れてみたいなと思いながら結局その機会もなく彼は「お先に」と言いながら逝ってしまった。その彼の話の中に鑑賞句のような風景が出てきたような記憶があります。その彼が詠みそうな句にも思えてきました。何十年ぶりに帰りついた故郷の懐かしい風景に「ほっ」と一息ついた彼の姿を想像しています。


a0376672_20090705.jpg



by haikutarou | 2017-10-17 20:11 | 句集鑑賞